弦自身から見た時、振動数に依存して変化するもう一つの振動系の質量 は
等価質量 と呼ばれますが、
それは、左の絵のように、弦の振動系によって、強制的に振動させられるもう一つの振動系・・・この場合、サウンドボードの振動系の共振周波数によって、劇的に大きく変化します。
この理由を説明すると、振動工学を全部説明しないと出来ませんので、ここでは、「そういうものだ・・・」と鵜呑みにしてください。
上のこのグラフをご覧いただきながら、左の解説を読んでみて下さい。
Yamaha LS36
の例で説明します。
D3
の音から弾きはじめていますが、 E3
の音辺りから、
モード
(0,0) の共振点の影響を受け初めているようです。
左の説明の、
(1) の部分は、
モード (0,0)
の共振点 G3#
より低い周波数の音の場合です。
低い方から、共振点 G3#
に近付くに従ってピッチはどんどん低くなって行きます。 すなわち、共振点 G3#
に近付くに従って、
等価質量 として作用するサウンドボード系の質量 が段々大きくなって行った結果、弦に大きな質量が付加されたことになり、弦の振動数が下がったものです。
(3) の部分は、
モード (0,0)
の共振点 G3#
より高い周波数の音の場合です。
モード
(0,0) の共振点 G3#
は、正確には、 G3#
より、-23
セント に計測されていますので、弦の振動数 G3#
は、既にモード
(0,0) の共振点 G3#
を僅かに超えたところに有ります。
このグラフでは、その音のピッチが、マイナス から プラス に突然変化
しています。
すなわち、モード
(0,0) の共振点 G3#
を超えた瞬間に、
等価質量 として作用するサウンドボード系の質量 が、大きくマイナスして、見かけ上、弦の質量が減少したようになったため、弦の振動数が上がったものです。
それより上の音の
(4) の部分は、 B3
から
D4
辺りの音の部分で、
等価質量 が、ゼロ0に向かって増えて行くので、弦の振動数は、共振と全く関係のない、弦の振動数に戻ったものです。
このように、モード
(0,0) の共振点 を挟んで、ギターから発せられる音のピッチが、マイナスからプラスに大きく突然変化するこのグラフの実験結果は、左の絵の振動工学の理論と良く一致する結果となりました。
こちらでご紹介した、
共振点
モード
(0,0)
、あるいは、その付近での弦の振動の周波数成分は、弦の振動
の中から消えてしまう・・・と言う現象は、 左の絵の、(2)
の状態に当たります・ |