弓の力学 (6)

   第2章 弓の強さ・柔らかさを考える

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 このページは、弓の扱い易さ ・・・の重要なファクターについて考えます 

 

弓中央から弓先にかけて震え易い

 

弓の強さは十分ですか・・・

それは、弓の性能に大きく影響しています。

 

あなたの弓の 強さ・柔らかさ・・・果たしてどれくらいでしょうか。

 

弓を置いたとき、なぜ震えてしまうのか・・・

チェロを習い始めた頃、先生から必ず注意されることがあります。  「必ず、弓を置いてから弾き始めなさい・・・」   これは、初心者にとって理解が難しいテーマです。 特に、弓先からアップで弾きはじめる時は、その意識が重要となります。

 と言うのは、 弓を置く  というのは、単に物理的に弓の毛を弦の上に載せる・・・ということだけで無く、スティックのコントロールを右手が完全に行った状態で弓を動かし始める・・・と言うことなのです。 弓の毛を弦に載せた瞬間には、弓は僅かながらでも、必ず微小な震動をしてしまう宿命を持っているからです。

 

このビデオをご覧ください (途中にノイズが有りますことをご容赦ください)

二つの弓で比較していますが、多少違いがあるように見えませんか。

 

ある程度腕前が上がってきた段階では、 「音の出をもう少しはっきり・・・」  とか、  「弓を飛ばして・・・」 など、意味不明 なご注意もあるかも知れません。 こんな時先生が使っているような  良い弓  であれば、何とかそれについてゆけるのですが、弓の性能が伴わない場合は、幾らその意識をもって弾いても、実際にそれを表現することが難しい・・・というのが現実ではないでしょうか。

 

この章では、弓が持つ 僅かながらでも、必ず微小な震動をしてしまう宿命 について考えてみたいと思います。

 

図15 弓の振り子振動 に示したものが、僅かながらでも、必ず微小な震動をしてしまう宿命 を図にあらわしたものです。

 

弓の毛の張力は弓自身の姿勢を支えています。 右手で加えられた荷重(圧力)が大きければ、弓自身は多きく姿勢を変え、逆に荷重(圧力)が小さければ姿勢の変化は小さくなります。 すなわち、荷重(圧力)に比例して弓の姿勢の変化の量が変わります。

 

すなわち、弓はバネ なのです。

 

一方、弓には必ず重さがあります。 重さのある物体がバネに結びつく と、そこには必ず 振動する要因 ができてしまいます。 図15 は、その関係を導き出したものです。 

図15 弓の振り子振動

この関係を解き明かすために、上の図に示したような 振り子バネ定数 k(x) というパラメーターを導入しました。 この値は、毛の張力 Tp と毛が弦に当たっている位置 x によって変わります。 演奏していて分かることですが、弓の元では弓の震えは起こり難く、弓中央から弓先にかけて震え易い と言うことは容易に理解できると思います。

 

弓の震え 特に、その振動数を解明しよおとすると、弓の重さや重心などから決まる 慣性モーメント Ib を知る必要があります。

 

慣性モーメント と言うのは、柱時計の振り子 が振れる時の振れの周期(1サイクルの時間)を決めているファクターと同じもので、重さのある物体を振り回した時にその重さの大きさを感じる数値です。 (ゴルフクラブのシャフトは、カーボンの方が軽くて、振り回し易い・・・などと言うのと同じです。カーボンシャフトのクラブの方が慣性モーメントが小さいのでしょう)

 

 

 

 

 

柱時計の振り子 の場合と同じように、弓を振り子運動させることによって、その 慣性モーメント Ib を計測することが出来ます。 弓の回転中心と考えられるフロッグのヘェルール(金環)部にV溝付きのゴムパッドを挟み込んで、それを、壁などの確りした所に固定されたボールベアリングに載せて、弓を振り子運動させます。 ボールベアリングを使用するのは、回転時の摩擦を減らして、精度よく振り子運動の周期を計測するためです。 このビデオをご覧ください

 

10回程度の振り子運動の時間をストップウォッチで計測し、1サイクル当たりの時間 T (sec) (振り子運動の周期)を算出します。 その値を、弓の重量 W と 重心までの寸法 lG と一緒に計算式に代入することで、弓の 慣性モーメント Ib を計算で求めることができます。

 

振り子バネ定数 k(x) は毛張力から計算で求めることができるが、ここでは、下図の方法を用いて、実際に弓の毛を張った状態で実測することとした。

図16 振り子振動の先端バネ定数計測法

実測された、振り子バネ定数 k(x) と、弓の振り子運動の周期 T (sec) を計測して求めた 慣性モーメント Ib の数値を用いて、弓の振り子振動 の振動数 fo を計算で求めた。

 

その結果を、表 5  (計算結果) fo 振動数 (Hz)  欄に示した。

 

上の、図15 弓の振り子振動 に示した様に、振動数 fo は、弓の毛の弦に当たっている位置 x によって変わり、その 振動数比 C は、 x=0.5 の値を 1 とした場合、 x=0.25 の時は 1.73x=0.75 の時は 0.58 という比になると考えられるが、実測値の振り子バネ定数 k(x) と、慣性モーメント Ib から計算された 振り子振動 の振動数 fo は、ほぼその比に近い値となり、実測された値は、ほぼ正しいものと考えられる。

 

すなわち、弓の振り子振動の振動数 fo は、 弓先にゆくほど、振動数が高くなる  ・・・という性質があることが分かった。


図17 振り子振動の振動数 (計算値)

このグラフを見ると、それ程顕著な差ではないものの、弓によって振り子振動の振動数 には差があることが分りました。

これは、 スティックの強さに起因  している・・・と考えられます。

 

この差が弓の性能にどのような違いをもたらすか・・・は、別な章で検討することとします。

表5 弓の振り子振動 の振動数 fo 計算結果

        共通データ入力 振子振動の振動数 fo を Ib, K(x) から計算 振子振動の振動数 fo (実測値) 4.5     弓の張り・・・d1 d2 での評価  
  Cello Bow 材質 形状 重量、重心 長さ (cm) 太さ (mm) 振子慣性モーメント Ib (g*cm*sec*sec) 振り子バネ定数 K(x) (g*cm/rad) (実測値) (計算結果)
fo
振動数
(Hz)
振動数

C
2006/12
実測値
(Hz)
2007/7
実測値
(Hz)
実測値
平均値
fo
(Hz)
振動数

C
(実測値)

先端
バネ定数
K(t)
(gr/mm)
x
 による
理論的
振動数

C
Cello Bow リンク貼付 リンク貼付 実験時 限界 d2 リンク貼付
単振動周期 T (sec) (実測値) Ib
慣性
モーメント
先から
位置
x
中央
荷重 (gr)
荷重変位 (mm) (実測値)
振り子
バネ定数
K(x)
(37)
スティック
係数

α
(Kg/mm)
実験
Stick

間隔

(mm)
Normal d2 (43)
(検算)

fo
振動数
(Hz)
12.0 張り能力
da
減衰振動
ζ平均
Ws
Stick
(gr)
W
全重量
(gr)
lG
重心
(cm)
全長 ls
Stick
l
中央 1回目 2回目 平均値 周期  荷重前 荷重後 先端
変位

Th
初張力
(Kg)

Th max
最大
初張力
(Kg)
1 Sandner                                 0.00               53.0 54.0 53.5       Sandner              
Pe 50.0 81.0 17.0 71.5 69.8 61.0 5.9 9.5 10.0 13.84 13.82 13.83 1.38 66.8 0.25 190.0 43.5 41.6 1.9 1,860,500 26.6 1.67 26.0 25.8 25.9 1.68 678 1.73   1.0         0.012
                                0.50 190.0 45.3 40.0 5.3 666,972 15.9 1.00 15.8 15.0 15.4 1.00 243 1.00 0.99 11.0 9.9 15.1 10.9 11.0  
                                0.75 190.0 51.0 35.5 15.5 228,061 9.3 0.58 9.5 9.0 9.3 0.60 83 0.58   11.0 9.9        
2 Arcus
Veloce