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良くわかる MTS解説


 S
ギターの進化 極限のピッチ への途とは

 

 

 MTS   の動作原理・インストール方法・サンプルサウンドなど、もう一度確認したい方は、漫画や Video をご覧ください。


漫画で分かる MTS

MTS 動作原理 Video

S.O.S 情報提供ページ

 

 


正確なイントネーションを得るには

 イントネーションとは、「音の調子」と言うことです。 正しい音の調子・・・それは、正確なピッチで奏でられることに他なりません。

 正確なピッチで演奏出来るように、ギターメーカー、ギター製作家達は、今までも、さまざまな工夫を凝らしてきました。

フレットが正確に切られていること。 極力、低い弦高で演奏できるように、ナットやサドルが正しくセットアップされていること。 ネックの正しい状態を確保するためのトラスロッドの調整。 安定し て、良い響きとなる弦の選定。 数えれば切りがありませんが、あなたが今お使いのギターは、多分、これらが全てベストな状態になっていると思われます。 しかし、まだ何となくイントネーションに不自然さが残っていると、感じていませんか。 


このページは、正確な
イントネーションを得るための方法と、その歩みについてご紹介したものです。  小さな画像は、クリックすると大きくご覧いただけます。

フレットは正確に切られているのでしょうか

 ギターのようなフレット楽器に、リュートがあります。 そのフレットの位置を決める法則を作ったのは、ガリレオ・ガリレイのお父さんの、Vincenzo Galilei と言われています。 今から 400年以上前でした。 この時の半音の弦長比は17:18 (0.94444) だったようです。 今では、平均律の半音の振動数比 である1.0594631 から導きだされる Fret Factor 17.817 の数値を使って、コンピューター制御の工作機械で正確にフレットが切られていますので、フレットの位置が狂っているためにピッチが狂う・・・と言うようなギターは、全く見られないと思います。
フレット位置の例は、下の画像をご覧ください。

フレットの位置は正しいのに、何故、音のピッチは狂うのでしょうか。


使っている弦が影響しているのか

 ギターが今のような形になったのは、
Torres のギターと思いますが、その当時、弦はGut 弦が使われていました。 その後、スチール弦が登場し、更に、革新的なプラスチック材としてNylon弦などが登場しました。 これらの弦は、大きな音が出せ、寿命が長い、など、大きなメリットがありますが、正しいピッチの音を出す・・・と言う観点では、決して良いものではなかったと思われます。  ただし、Nylon floss string は、Gut 弦と構造が似ていますので、ピッチの狂い方は比較的少ない弦です。

 MTS  の開発に当たっては、弦を押さえた時のピッチの狂い易さを示す値として、 このグラフに示すような Ke と言う数値を導入しました。 Nylon弦とGut 弦を比較してみると、Ke の数値はGut 弦の方が小さく、Gut 弦を使っていた昔のギターは、ピッチの狂いが少なかったと考えられます。 その他の弦は、下のKeの図をご覧ください。

 


サドルをどうすれば良いか・・・C. F. Martin は悩んだと思われる


アコースティックギターのサドル「オクターブ調整」

 今のアコースティックギター(スチール弦のフラットトップギター)を最初に作ったのは、あの C. F. Martin です。 ドイツに生まれ、アメリカに移住した後、1800年代の半ばには、Xブレーシングを持ち、 大音量で演奏できる大きな胴の Dreadnought スチール弦ギターを作りました。 (この写真のものは、当時のものではありません)。 Keの図でも分かるように、スチール弦のピッチの狂い易さを示すKe の値は、当時使われていたGut 弦と比べると 5倍から10倍程度大きいため、クラシックギターと同じブリッジ・サドルのままでは、到底、弾けるギターにはならなかったと思われます。

 そこで、ブリッジに埋め込んだサドルの位置を12フレットから僅かに遠ざけ、更に、5弦、6弦などの太い弦は、サドルの位置を12フレットから大きく遠ざけるために、サドルを傾けて取り付ける方法を、試行錯誤して作りだしたものと思われます。 スチール弦の時代になると、ギターでのサドル調整は、必須のものとなりました。

これが、今のギターにも使われている「オクターブ調整」と呼ばれるサドルの調整方法です。

Ditson-111

   

(興味ある話題)
毎日ムック 「ギター名器 バイブル」 2010年1月10日 毎日新聞社出版 に、マーチンが1916年に 生産開始した、Ditson-111 と言うギターの写真が掲載されていますが、クラシックギターと同じ ように、傾きのないブリッジ・サドルのギターが掲載されています。 スチール弦でも、この時代では、まだサドルが傾いて無かったことがうかがえます。
こちらのサイト
 の この画像 でご覧いただけます。


20世紀・・・エレキの時代が始まる

(興味ある話題) 毎日ムック 「ギター名器バイブル」 2010年1月10日 毎日新聞社 出版に、このギターの実物の写真が掲載されています。

 最初のエレキギターは誰が作ったか・・・こちらでご紹介していますが、この図面は、エレキギターメーカーの老舗、Rickenbacker リッケンバッカー社の、George Beauchamp 1934年に出願した、エレキギターの特許の明細書です。 この図面には、まだサドルの調整メカニズムは明示されていません。


 この図面は、1941年に出願された、Electric Acoustic Archtop Guitar のものですが、ブリッジで弦長を変えている様子はうかがえますが、現在のようなブリッジにはなっていません。 1950年代に入ってから、アコースティックギターでも、下の写真のような、Tune-o-matic と言う、弦毎にサドルの位置を変えられるブリッジが使われるようになりました。

 


本格的な サドル調整メカを作ったのは・・・誰?

 


  1952年Gibson が、ソリッドボディのエレキギターLes Paul の発売を開始しました。 それには、Ted McCarty の発明によるTune-o-matic と言う、画期的なブリッジ(TOM Bridge)が搭載されました。 (下写真左)
これは、弦高とサドルの位置の両方を調整出来る、サドル調整メカニズムです。

 1950年代は、エレキギター誕生の時代でした。 Fender の、Telecaster Stratocaster にも、同様の機能を持った サドル調整メカニズムが使われました。

 ソリッドボディのエレキギターは、胴の上に、多少重いパーツを取り付けても、楽器の鳴りに全く影響が無いので、このような金属製のパーツを取り付けることが出来たのですが、それ以上に、Keの図でも分かるように、エレキギターの弦のピッチの狂い易さを示すKe の値は、アコースティックギターの弦と比べると 1.5倍程度大きいため、サドル位置を調整して、正確なイントネーションを確保することが必須となったためです。


アコースティックギターは、進化してないのか・・・


サドル調整メカニズムの例

 アコースティックギターの場合は、ブリッジに重いパーツを付けることが出来ません。 従って、ブリッジに埋め込んであるサドルのみで、「オクターブ調整」する必要がありますので、左下の写真のように、予め弦長を補正した形状のサドルを使って、簡易的な「オクターブ調整」を行っているものが殆どです。 しかし、正確な「オクターブ調整」を行えるように、サドル調整メカニズムに挑戦した例は幾つかあります。

 この写真のパーツは、

GRANDADDY
と言う商品名で発売されたものですが、アコースティックギターのブリッジの溝に嵌め込んだ状態で、弦の載る位置を前後に調節できるメカですが、弦高などに制約があり、余り普及しているパーツとは考えられません。

左の写真のパーツは、あるメーカーのアコースティックギターに搭載されたサドル調整メカニズムですが、これも、目にする機会は少ないパーツです。

 
ギター製作家や、ギターメーカーが1本1本手作りで作る
ハンドメイドギターの場合、「オクターブ調整」は、この写真のように、サドルに弦の載る位置が正確な寸法になるように削りだされて調整されるのが普通です。
 

サドル調整は、何故そんなに重要なのか・・・

  このグラフは、アコースティックギターで、もし、サドルの調整を行わない場合の、各フレットを押さえた時のピッチの狂いを計算で求めたものです。 エレキギターの場合でも、同じような状態になります。  このように、12フレット側に行くに従って、ピッチが上がってしまうものでは、演奏に耐えられるギターにはなっていません。

 通常のナイロン弦クラシックギターに、スチール弦を張ると、これに近い状態になりますので、C. F. Martin が、最初に Dreadnought スチール弦ギターを作った時は、こんな状態にびっくりしたと思います。
 上で述べましたように、彼は、サドルを傾けて取り付ける方法を考案し、
「オクターブ調整」を行ってそれなりのイントネーションのギターに仕上げたと思いますが、その程度がどのようなものであったかは分かりません。


サドル調整で、ギターはこうなった・・・

 このグラフは、アコースティックギターで、完璧な「オクターブ調整」を行った場合の、各フレットを押さえた時のピッチの狂いを計算で求めたものです。

 これに近い状態が、現在、作られているイントネーションの良いギター・・・ということになります。 エレキギターの場合でも、同じような状態になります。

 サドル調整と言うものは、エレキギターの場合は、上で説明したようにサドル調整メカニズムで、精度よく行うことが出来ますが、アコースティックギターの場合は、予め弦長を補正した形状のサドルを使って、簡易的な「オクターブ調整」を行っているものが多くありますので、このグラフのような完璧な状態になってる物のほうが少ないのが現状かも知れません。

 


サドル調整に、工夫を凝らしている例もある・・・

 

 上のグラフで分かるように、完璧な「オクターブ調整」を行った場合、5弦や6弦は、ローフレットでピッチの狂いが大きく残ってしまっていることが分かります。

 サドルに弦の載る位置を、12フレットから更に遠ざけると、オクターブのピッチはフラット傾向になります。その結果、ローフレットのピッチ上昇も、その分僅かに 少なくなります。 ローフレットでピッチの狂いを少しでも少なくすることを狙って、サドルを大きく傾けて「オクターブ調整」を行っているギターも中には見受けられます。


正確なイントネーションを得るには・・・他にも何かある ???

 

  これは、クラシックギター用の弦の事例です。 ここに示すように、クラシックギター用としても、さまざまなメーカーから、色々な種類の弦が発売されています。 基本的には、4,5,6弦はナイロン巻線弦で、1,2,3弦がナイルガットや、カーボン弦、あるいは、3弦のみケブラー弦など、ナイロン材料より重い材料を使ったものがあります。 これは、重い材料を使うことによって、弦のテンションを上げ、弦をフレットに押さえた時のピッチの狂い方を低減させる目的で作られた弦と思います。 弦メーカーもイントネーションを良くするために、地道な開発を積み重ねているものと思います。

 アコースティックギターやエレキギターの場合でも、弦のゲージが太い、所謂、ハードゲージの弦の方が、弦をフレットに押さえた時のピッチの狂い方は小さくなり、イントネーションの良いギター・・・ということになります。 それには、ギターの強度・・・特にネックの強度が大きいことが必要になります。 スチール弦ギターの誕生とともに、ネックの強度を保つためのTruss Rod などが使われるようになったのも、その理由からと考えられます。


もっと正確なイントネーションを得る方法は・・・???

 この図面は、1992年に、Howard B. Feiten がアメリカで出願した特許の明細書の最初のページです。

 あの、Buzz Feiten Tuning System に関する特許です。 彼が考えた方法は、ナットから第1フレットまでの寸法を僅かに短くして、ローフレットで弦を押さえた時のピッチの上昇を低減し、更に、サドルの位置を調節して弦毎にオクターブのピッチを微調整する・・・と言うものでした。 要は、ギターの発展の過程で、サドルの調整だけでは、これ以上、イントネーションの良いギターは作れない・・・と言うことに着目した、画期的な考え方を提唱したものです。

 すなわち、この図をもう一度開いてご覧になってください。 イントネーションの調節には、ナットと言うパーツが残っていた事に気付いた・・・と言っても良いと思います。 その後、本家 のアメリカでは、ナット補正と言う考え方の特許が数多く出願されています。

Buzz Feiten Tuning System 特許の記述
6359202_1  6359202_2
   

どうせやるなら、もっと思い切ったナット補正を・・・これが  MTS


MTS 動作原理 Video

 Buzz Feiten Tuning System では、ナット補正の量は、弦に関係なく、エレキギターでは 2.1%(0.76mm) 、アコースティックギターでは 1.4%(0.5mm) 、ナイロン弦ギターでは 3.3%(1.2mm) ナットから第1フレットまでの寸法を僅かに短く設定するものです。 その短縮量だけでピッチの上昇が防げない、太い弦に関しては、開放弦のピッチを僅かに下げたチューニングを行い補正を行うチューニングシステムです。

 工房ミネハラが開発した  MTS  では、弦がフレットに押さえられた時に起こるピッチの狂いを 、 Intonation Error と言う値に数式化し、弦が押さえられた時の 、ピッチの狂い易さを示す値 である、Ke と言う数値で、 Intonation Error をシミュレーション計算できるシステムを開発しました。 (特許第4383272) これで、ナット補正の量を、弦毎に最適な値に設定する事が可能となりました。 その寸法は、アコースティックギターの場合、第1弦は0.6mm 程度、第6弦は2.5mm 程度の補正量となっています。


S.O.S  (SOUND OFFSET SPACER )

 MTS  の動作原理は、左の Video をご覧ください。


 サドルを弦毎に補正することは、ギターにとって、必須の技術だった・・・

 それなら、反対側のナットも、弦毎に補正すれば、更に良くなるだろう・・・と、考えた結果

 今まで、サドルだけでやっていた補正を、サドルとナットの両方で、半々に分けあうことになった・・・

 これが、 MTS  の基本的な考え方です。

 これで、ギターのイントネーションは 極限のピッチ に近づきました。


 MTS  で、イントネーションはこうなりま した・・・

 アコースティックギターに、S.O.S  (SOUND OFFSET SPACER ) サウンド・オフセット・スペーサーを取り付けると、ローフレットのピッチの上昇は全くなくなります。

 更に、それに合わせたサドルの「オクターブ調整」も行うと、12フレットのピッチ上昇も完全になくなります。

 これで、全てのフレットポジションで、完璧なイントネーションのギターに変身することになります。

 Buzz Feiten Tuning System ナット補正の量は、下の画像のような違いがあります。


 MTS  は、こうやってインストールします・・・

 これは、 MTS  コンピューターシミュレーション計算の例を示したものです。

 S.O.S  (SOUND OFFSET SPACER ) サウンド・オフセット・スペーサーは、通常の平均的な仕様で作られたギターに最適な寸法となる数値でパーツが作られています。

 オフセットナットを用いた、パーマネントインストールの場合は、牛骨(ボーン)やMicarta あるいは、潤滑性の良いスリップストーン(Delrin (R)) などの素材を削って作られる、一体のオフセットナットを仕込むことが可能です。

  ナットの補正量やサドルの補正量などは、使用している弦、ナットやサドルで設定される弦高など、全てのファクターを加味して、インストールする寸法が決められます。

 


 MTS  なら、こういうギターになります

  MTS  インストール事例は、ユーザー事例集 をご覧ください。

 
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Patented  (特許第4383272)

(C) Copyright このページで掲載しているデータの無断転載 ・公開等はお断りします。

このページに掲載したギターは、 MTS  の搭載事例を示したもので、ギターの音程の狂いとは直接の関係はありません。


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2020/5/10
Updated:2010/12/8

First Updated:2010/2/7