タチバナバイオリン 橘樹 成幸の

クレモネーズワニスの謎

Mistery of the Cremonese Varnish

Shigeyuki Tachibana

 クレモネーズワニスとは、クレモナを中心にとして製作されたバイオリンの名器に塗られたすばらしい オイルニスの事で、その伝承が途絶えてしまった現在では、進歩した科学をもってしても”正体不明の謎のニス” の事です。

 おそらくその当時、錬金術師の様な人物がおり、ガスパロダサロやマジーニ、アマティ一族、ガルネリ一族或いは ドイツのスタイナーなどと共同研究して創り出したと推測されます。
 しかしバイオリンの木材(松や楓)はどんなに良質でも、構造の半分は空洞になっているわけで、いわば一種の スポンジにすぎません。爽やかに響きはしますが遠くまで抜けて行く力はあまり無いわけです。
ですから木材のエネルギーだけでは強い音響は得られず、塗料の力が必要とされるのです。
 日本の笛や尺八にも保護の意味だけでなく音質・音量のために”うるし”が塗ってあったりします。

 更に、アルコールニスの方も、組識が脆弱でエネルギー不足が否めず、この様なマテリアルなどではとても名器 のあの ”明るく輝く” と同時に ”柔らかく胸にしみいる” 様な音質は望めないと私は判断しました。
また、それだけでなくアルコールニスは湿気を通すため木質を劣化させ膠の接着力をも弱くしてしまって、 表板の割れや、裏板センターのはがれなどの重大な故障となるのです。

 私は、この様な事から結局 「多量の倍音を発生する強靭なオイルニスがバイオリン製作に は不可欠である」 と考えたのですが、安定した性能で正数倍音と不整数倍音を大量に出す様に創るのが難しく、当然の事ながら 長い年月、試行錯誤を重ねてきました。

 それでも、ようやく最近になって一応の成果を自認する様になり、ほっとした心境になっているのですが、 勿論 ”クレモネーズワニスの謎” が解明されたなどと言う積もりはありません。
実際それを証明する事も不可能でしょう。

 只、見識あるバイオリニストの判定を待つしか有りません。


私の経歴

・1930年11月7日 東京、浅草生まれ。

・1953年から、5年半 笠川貞通氏に徒弟修行。

・1963年から、お茶の水の下倉バイオリン社にてバイオリン修理担当。 同時にワニスの試作

・1996年 タチバナバイオリン独立。自宅工房でバイオリン、ビオラ、セロの製作、修理、調整。

タチバナバイオリン
橘樹 成幸
(Shigeyuki Tachibana)

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工房ミネハラ
Mineo Harada

Updated:2000/5/29