このページの一番上の絵をご覧ください。 この絵を見れば、それはご理解いただけると思います。
褐色の状態が、弓に圧力を掛ける前・・・、 緑色の状態が、弓に圧力をかけた時。 へなへな弓では、このような姿勢は保てません。
この性能は、こちらの、スティック係数 α で決まります。
毛の張力 Th
は、毛を張る前の毛間隔
d1
、毛を張った状態の毛間隔
d2 、スティック材料の
縦弾性係数
E と、スティックの太さから決まる 断面2次モーメント
I の数値などから決まります。
スティック係数 α とは、毛を張る量が dt
= ( d2
- d1
) の時、
毛の張力 Th
=
α
×
dt と言う関係を決める重要なファクターです。
スティック係数 α を決めているものは、スティック材料の
縦弾性係数
E と、弓の形状や太さ
(丸か角か・・・など)です。
スティック材料の
縦弾性係数
E の大きな材料が使われていること・・・これは言うまでもありません。 弓製作家は、フェルナンブコ材の良いものを求めて、世界中を探している・・・と聞いています。 こちらで検討したように、縦弾性係数
E の値は、 2,500-3,000
(Kg/mm*mm) は最低限必要と思います。 欲ばれば、3,000
(Kg/mm*mm) 以上が必要でしよう。 今回、サンプルとして評価した 13本のチェロ弓 の中には、ウッドボウでその条件を満たすものは、J.P.Gabriel
G-30 しかありませんでした。
そういう観点から材料を見たとき、最近注目を集め始めている
CFRP
(カーボン繊維複合材料) の弓は、縦弾性係数
E が
大きく、一つの選択肢と考えられます。
大きな スティック係数 α を確保するもう一つの方法は、こちらで述べた、弓の形状や太さ
(丸か角か・・・など) で決まる 断面2次モーメント
I を大きくする方法ですが、太さでそれを実現させようとすると、弓自身の重量が増えてきますので、スティック材料の
縦弾性係数
E とのバランスで選ばれるべきです。 材料自身のグレードがあまり高くない安価な弓は、角弓 にすることによって、大きな 断面2次モーメント
I とし、大きな スティック係数 α を確保していると言っても過言ではありません。
いずれにしても、スティック係数 α という数値は、ただ、弓を眺めていたのでは分らない数値ですので、こちらで実測した、振り子振動の振動数 fo と スティック係数 α の関係を、参考として示します。
図29 各弓の
スティック係数 α と振り子振動数
f0
スティック係数 α は、毛の張力 Th
を確保するために
0.9 以上は最低でも欲しい値です。
振り子振動数
f0 は、こちらで検討したように、28
Hz 以上あれば、完璧でしょう。 少なくとも、振り子振動数
f0 の高いものが良い・・・ということ。
振り子振動数 であれば、実際の弓で計測することができます。
スティックの強さを評価する数値として、こちらで、スティック中央変位 ds
というパラメーターを導入しました。
これは、このページの一番上の絵のように、右手の人差し指で弓に圧力を掛け、その荷重によって弦に掛かる圧力が 200gr
一定になるようにしたときの、弓中央がどれくらい変位するか・・・ということを示す数値として導入したパラメーターです。
図29 各弓の振り子振動数
f0 と スティック中央変位 ds
に示したように、振り子振動数
f0 の高い弓であれば、当然スティックの強さも確保されていることがわかります。
図30 各弓の振り子振動数
f0 と スティック中央変位 ds
スティックの強さは、実際に弾いてみれば分かることですが、振り子振動数
f0 との関連が分かっていれば、確実に評価できると思います。
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